昔から「借りる」という行為があまり好きではない。理由は単純、いつかは「返さないといけない」から。
ぼくは本というものが持つ手触りとか質感とかがとても好きなので、気に入ってしまったらすぐに自分のものにしたくなる。それに、借りてちょっと読んで中身を知ってしまうと、真新しい感情で接することができなくなるから、買うのもなんだかもったいなくなっちゃって、なんだか損した気になる。これはちょっと貧乏くさいね。
まあとにかく、そんなとても個人的な理由から、こんなに近くにあるのに1年以上足を向け続けてきたわけだ。でももうこの街ともあと2か月ほどでお別れなので、気まぐれで行ってみた。
もちろんそんなぼくの思いとは関係なく、日曜の朝の図書館はとても清々しい空気にあふれていた。
休みの日の解放感と早起きした満足感に満ちた人たちが、何にも追われずお気に入りの小説を見つけようとのんびり探してたり、親子で絵本を読んでたり、受験生みたいな人が生真面目な顔でノートにペンを走らせてたり。
つまり、悪くないってことだ。
試しに借りてみたのはこれ。
あの時代に、ジャズ/ロック喫茶として名を馳せた、ひとつのお店の物語。
コマーシャリズムを廃した音楽ばかりを流してたことで、皮肉にも今ではある種のブランドのような価値を持った店として知られるお店。
こんなお店が大学時代に近くにあったら、間違いなくぼくは常連になっていただろう。
BYGには何度か行ったことがあるけれど、ここにも行ってみたかった。
カレン・ダルトン、ボビー・チャールズ、エリック・カズ…。
ここで選ばれた99枚のレコードは、知らない間にぼくのレコード棚にもたくさんある。
そしてこれを読み終えた今、無性にザ・バンドを引っ張り出して聴きたくなっている。
このお店の写真はモノクロでしか載ってないけど、きっと彼らの音楽のように土くさく、ぬくもりに溢れた質感だったんだろうな。
いろいろと考えさせられたこの本の中で、特に印象的だったことばを引用しよう。
ブラック・ホークの常連であり、パイドパイパーハウスの社員であった新井健文さんのコメントより。
――好きなことを続けるには「マイナー」であることの覚悟が必要、
それを感じ(教え)させてもらったのがブラック・ホークへの印象である。
好きなものは譲らないと思いきれること。
それがあの時代をすごした実感である。――
それがあの時代をすごした実感である。――
2週間経って図書館に返したら、やっぱり欲しくなるかな?
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