2012-08-29

Fallen Angels

グラム・パーソンズについての、ほとんど唯一のものと思われる
ドキュメンタリー「Fallen Angels」を観た。

その勢いで、これを書いている。


カントリー・ロックはThe Byrdsの「Sweetheart of the Rodeo」から
始まったということがよく言われる。
言わずもがな、グラムが加入してバーズが一気にカントリー・ロック化する
きっかけとなったアルバムと言われているものである。

でもこのアルバムを僕が大学時代に初めて聴いたときには、
「こんなのカントリー・ロックじゃなくてただのカントリーじゃん」と思ったもの。
そのころまだよく知らなかったペダルスチールの音はやけにオッサンくさく聴こえて、
フォークロック期、 サイケ期と追っかけてきて大好きだったバーズが
どこかに行ってしまったような気がしたものだ。
(「Untitled」でクラレンス・ホワイトにはまるのはまた後の話)


フライング・ブリトー・ブラザーズは、一発で気に入った。
ペダルスチールにファズをかけ、凶暴に歪ませる。
当時としては画期的だったろうことは想像するに容易い。
僕の中でカントリーロックのペダルスチールと言えば、
スニーキー・ピート、ラスティ・ヤング、バディ・ケイジ、アル・パーキンス…
まあそういうことだ。

それからいろいろカントリーロックと呼ばれるものを聴き漁ったし
ニューライダースもポコもエリアコードも他にもいろいろ大好きだけど、
やっぱりブリトーにはかなわない。
グラムが離れた以降4枚目までも素晴らしい。


話がグラムから逸れた。
ブリトーでのグラムは曲もヴォーカルも本当に冴えわたっていて、
特に「Hot Burrito」やストーンズの「Wild Horses」、
またDan Penn作の名バラード「Dark End of the Street」 での絶唱は筆舌に尽くしがたい。


アメリカでいうカントリーは、日本の演歌みたいなものだと思う。
同じ歌が、違う歌い手によって歌い継がれていく。
別にカントリーに限ったことではなく、ブルース然り、ソウルミュージック然り。
ルーツミュージックというのはそうやって生き長らえ、形を変えて成長し、今に残る。

グラムがやったことはその一部ではあるが、またそれだけでは決してない。


グラムのソロは2枚しか残されていない。
彼の才能を考えれば少なすぎる。
だがここに残った20ほどの曲たちはそうしたカントリーの枠に明らかにはまっていながら
どうしてもはみ出してしまうグラムの叫びのようなものがにじみ出てしまっているという、
ほかにはないものになっていて、 いつ聴いても震えるような気持ちになる。

つくる人の生い立ちや人生と、音楽とを重ねあわせて聴くのは好きじゃないけど
この映像を観てから、「GP」と「Grievous Angel」、そして残されていた
いくつかのライブ音源を聴くといっそう沁みる。
わかったつもりで聴いてた曲や歌詞が、まるで違うものだったような感じ。

ええと、何が言いたいのだっけ。
ただグラム・パーソンズが好きだと言いたいだけか。

書くとしょうもないものになってしまうような気がするので詳しくは書かないけれど、
そんなグラムの人生は、短くもあまりに濃い。
僕には彼のような壮絶な体験もなにもないけれど
彼の残した意志は同じように感じて持っていきたい。
カントリー・ロックにこだわりながらも、出す音から自分が透けるような。


0 件のコメント:

コメントを投稿